姿勢

反り腰になってしまう理由と改善方法

はじめに

姿勢の変化で代表的なのは「猫背」かと思われますが、猫背に次いで世間で注目を浴びている姿勢が「反り腰」です。

反り腰が世間にこれだけ注目される理由に

・反り腰を直せば「ぽっこりお腹解消」

・「仰向けで寝ていると腰が痛い」などの身体不調が改善される

などといった世間からの機能改善への期待の裏返しなのではないかと思います。

しかし注目されればされるほど、反り腰改善に対して根拠のない改善情報が出回っています。例えば「腹筋をすればいい」とか、「ストレッチすればいい」とか、、、、

腹筋やストレッチで反り腰が直れば誰も苦労しません。

反り腰を直すのはとても苦労することですし、そもそも反り腰になる理由が存在するのに、その理由を無視したままエクササイズや治療を受けていても一向に改善されないでしょう。

なのでこの記事では「反り腰を本気で直したい方」のために、参考になるような反り腰の基礎知識や改善方法をお伝えしたいと思います。

反り腰とは

(Rehatoraより画像引用)

脊椎の生理的弯曲は、頚椎が約20度の前弯(前方に凸型)、胸椎が約20~50度の後弯(後方に凸型)、腰椎が約46~60度の前弯(前方に凸型)と 言われています。これらの数値から逸脱している場合は、脊柱変形(後弯症あるいは前弯症)と診断されます。

つまり、

後弯症=猫背

前弯症=反り腰

ということです。

反り腰の簡易セルフチェック方法

とはいえ上記の画像のように「腰椎前弯角」を調べようと思っても、レントゲンで調べなければ分かりません。

そこで簡単に反り腰セルフチェック方法がありますので、自分が本当に反り腰かどうか調べてみても良いかもしれません。

①仰向けに寝る

②床と腰の隙間に指が何本入るか確かめる

1本が正常で、2本以上入ってしまう方は反り腰の可能性が高いです。

反り腰になる理由

反り腰になる理由の一つに「運動連鎖」という体の仕組みがあります。

運動連鎖とは?

運動連鎖とは上下の関節が連動して動くことをいいます。つまり、「足首が内側に倒れれば膝も内側に倒れますよ」ということです。

(Dr. Mitch Savic  Face bookより引用)

これを腰に当てはめると、骨盤が前に倒れると、その上にある関節つまり腰椎も前に倒れるということです。いわゆる「反り腰」です。

そして、この運動連鎖を起こしている組織が「筋肉」です。骨は単品では動きませんから、筋肉が骨を引っ張ることで動きます。

ヨーロッパ脊椎ジャーナルに掲載された論文においても

「体幹筋力の不均衡は腰椎の前弯曲線に有意な影響を及ぼす可能性があり、潜在的な腰痛の 1 つの危険因子となる可能性がある」

(3)Kim, HJ., Chung, S., Kim, S. et al. Influences of trunk muscles on lumbar lordosis and sacral angle. Eur Spine J 15, 409–414 (2006). https://doi.org/10.1007/s00586-005-0976-5

という研究結果が出ています。つまり、反り腰には筋肉のバランスが関係している可能性が高いということです。

骨盤前傾を促す筋肉

(D.ANeumann.筋骨格系のキネシオロジー原著第3版.エルぜビア・ジャパン株式会社,2021)

骨盤の前傾を促し腰椎を前弯させる筋肉は主に下記になります。

・腰部伸筋群(多裂筋など)

・股関節屈筋群(腸腰筋など)

逆に、骨盤を後傾させる筋肉はというと、

・腹筋群(腹直筋など)

・股関節伸筋群(大臀筋など)

になります。

つまり反り腰は「腰部伸筋群と股関節屈筋群」が強くて、

「腹筋群と股関節伸筋群」が弱いということになります。

じゃあ「弱いところを鍛えればいいのか!」と考えるのが当然なのですが、そんな単純ではありません。

そもそも「なぜ、腰部伸筋群と股関節屈筋群が強いのだろう」と思いませんか?

その理由の一つに人間の生命維持機能である「代償作用」があります。

代償作用とは

代償作用とはその名の通り「かばってくれる作用」のことをいいます。

人間関係で例えるなら、AさんとBさんはリレーのチームで走ることになりました。しかし、Aさんが膝を壊してしまいBさんは全て一人で走ることになりました。するとBさんはAさんをかばって走り過ぎたことで足首を壊してしまいました。

これを腰椎に当てはめると、Aさんにあたる股関節が正常に動かないから、Bさんにあたる腰椎がかばって動き過ぎた結果が「腰椎過前弯」つまり「反り腰」になった可能性があります。

代償作用を考慮するならば、ただ弱いところを鍛えるのではなく、まずは正常に動いていない関節を正常に動かせる状態にすることも大切なのです。

今回の例の場合は「股関節の動きを出してあげつつ、腰椎を後弯させる筋肉を鍛えていく」ということになります。

反り腰による影響

腰椎前弯の増強、いわゆる「反り腰」による体へのマイナス面の代表例は、

・腰椎椎間関節内の圧迫の増加

・腰椎の後方構成体の接触圧の増加

・下部腰椎の前方すべり症の好発

つまり簡単にまとめると「骨同士がぶつかってしまう」ということです。

反り腰の人が腰をさらに反らすと骨同士がぶつかって痛みが発生するので、仰向けで寝るのが辛いだとか、長時間の立位で腰が痛くなるなどが起きてくるでしょう。

反り腰の改善方法

腹圧を高めよう

腹圧が低いと腰が反ってしまい腰椎が安定しません。まずは腹圧を安定させて腰椎をコントロールできることは全てのエクササイズに必要不可欠です。

・ドローイン

①膝を曲げて仰向けで寝ます

②腹式呼吸をしましょう(鼻から吸って口から吐く)

※息を吸う際に胸郭が持ち上がる人は腹式呼吸ができていません。お腹を膨らませるようにします

③息を吐くタイミングで下腹部(おへそより下)をへこませます

④30秒〜1分行いましょう

・股関節伸展可動域訓練

股関節の伸展可動域(股関節を後ろへ反ること)を獲得することで腰椎の負担を減らします

①クッションの上で方膝立ちをする(タオルでも可能)

②前方へ体を移動させる

③後ろ足のお尻に意識を集中させる

④2秒キープする

※腰椎の前弯が起こらないように腹圧を上げる

まとめ

「反り腰」はぽっこりお腹などの見た目の問題だけでなく、腰椎同士がぶつかってしまう「椎間関節症」のリスクがあります。

つぐみ整骨院伊勢崎店ではカウンセリングで姿勢分析をし、何が原因で反り腰になっているのかを分析し改善へサポート。

人それぞれ反り腰の原因は違うので、今回紹介したセルフケアはあくまで参考程度にしていただき、一度専門家へ相談されることをおすすめいたします。

参考文献

Sparrey, C. J., Bailey, J. F., Safaee, M., Clark, A. J., Lafage, V., Schwab, F., Smith, J. S., & Ames, C. P. (2014). Etiology of lumbar lordosis and its pathophysiology: a review of the evolution of lumbar lordosis, and the mechanics and biology of lumbar degeneration. Neurosurgical Focus FOC, 36(5), E1. https://doi.org/10.3171/2014.1.FOCUS13551

The relationships between low back pain and lumbar lordosis: a systematic review and meta-analysis
Chun, Se-Woong et al.
The Spine Journal, Volume 17, Issue 8, 1180 – 1191

Kim, HJ., Chung, S., Kim, S. et al. Influences of trunk muscles on lumbar lordosis and sacral angle. Eur Spine J 15, 409–414 (2006). https://doi.org/10.1007/s00586-005-0976-5

(4)D.ANeumann.筋骨格系のキネシオロジー原著第3版.エルぜビア・ジャパン株式会社,2021

荒木茂.マッスルインバランス改善の為の機能的運動療法ガイドブック.運動と医学の出版社.2021

執筆者

つぐみ整骨院 院長 篠田健太

保有資格
柔道整復師国家資格(厚生労働省認定)
プロコーチ(マインドセット社認定)
日本足病学協会
Foot Science International社(ニュージーランド認定)

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