産後ケア

産後に起こる姿勢の変化と産後身体的ケアの必要性

はじめに

そもそも産後に身体的ケアは必要だと思いますか?

私は必要だと思います。妊娠から産後にかけて起こる姿勢変化の特徴を知れば、みなさんも産後ケアの必要性を感じるかもしれません。

とはいえ巷で流行っている整骨院や整体で行われている「産後骨盤矯正」と混同しないで下さい。

ひとまず骨盤がズレるという表現が医学的に正しいかは置いておいて、産後ケアで姿勢を正常に戻すのに骨盤のズレの有無が重要な訳ではありません。(もちろん当院でも骨盤のアライメントは調整します)

そもそも赤ちゃんを産み、その後にお母さんが普通に歩いている時点で、骨盤機能は正常に保たれています。骨盤機能が落ちるほどの骨盤のズレがあれば確実に片足に体重がかけれず、人間は歩行不能です。

ですので、骨盤のズレの有無が重要なのではなく、もっと他にも対処するべき箇所が多く存在するのです。

産後に多いからだの不調

「子供を産んでから腰痛が、、、」みたいなことは多く聞きますよね。この腰痛は治りずらくて繰り返してしまう方も大勢いらっしゃいます。

他にも「むくみ」で苦しんでいる方もいます。さらにむくみは腱の滑走性を低下させることで「腱鞘炎」の発生リスクを高めたり、局所的な血流不良により「静脈瘤」の原因に発展する可能性もあります。

姿勢の変化にも影響します。妊娠中から産後にかけての姿勢の変化が産後の身体的な不調原因の大きな要因でもあるので、これに関しては次の項で詳細をお伝えします。

妊娠中から産後にかけての姿勢の特徴

妊娠中から産後にかけてお母さんの姿勢はスウェイバックと言われる状態になるります。スウェイバックとは『胸郭屈曲拘縮+腹筋群の機能不全』に陥ってる姿勢のことをいいます。

これだけ聞いても難しいので、それぞれ解説します。

胸郭屈曲拘縮とは

まず「胸郭」について。胸郭とは「胸椎+胸骨+肋骨」を複合的にみた箇所のことをいいます。

次に「屈曲」とは、体を前方に曲げることを「屈曲」といいます。逆に体を後方へ倒すこと、つまり背骨を反ることを「伸展」といいます。

そして最後は「拘縮」です。拘縮とは動かさないことにより軟部組織が固まり伸張性を失うことをいいます。例えばギプスに巻かれた関節が、ギプスをとった後すぐには関節が固まって動かないことです。つまり関節周辺の筋肉等の軟部組織が拘縮したということです。

これらを基に「胸郭屈曲拘縮」は胸郭が前方に曲がり固まっているのだなと想像できますよね。

つまり、いわゆる「猫背」を胸郭屈曲拘縮と呼んでいます。研究では妊婦さんと非妊娠女性計48名の姿勢を分析した結果、「妊娠が進むにつれて、猫背になり骨盤が2.5倍前傾する」ことが分かりました。

腹筋群の機能不全とは

妊娠をするとお腹が外側へ伸ばされること(腹直筋離開)で、腹筋群の機能が低下することが研究で示されています。そして腹筋群の機能低下は出産後も持続してしまうことも明らかになっています。

腹筋群の機能とは

腹筋群の主な機能の一つとして姿勢の維持機能があります。腹筋群の張力により背骨が反ったりせず真っ直ぐ安定するのです。

以上の「胸郭屈曲拘縮+腹筋群の機能不全」で

・骨盤が前傾

・お腹が前に出る反り腰

・猫背

・ストレートネック

・仙腸関節離開(骨盤が開く)

これらの要素が絡み合い「スウェイバック」となるのです。

産後身体的ケアの必要性

ほとんどの場合、産後にケアしない限り「スウェイバック」が改善することは稀でしょう。

スウェイバックは猫背になり腰痛や肩こりの大きな原因となることもありますし、内臓機能や自律神経機能、筋機能の低下も大いに有り得るでしょう。

これまでの私の説明を聞いてみなさんは産後ケアについて必要性を感じたでしょうか?

ところで「骨盤」について語っているのは、産後に起きる姿勢の特徴の中でもごく一部です。産後ケアに必要なことは決して「骨盤矯正」ではないのです。

体型や身体不調で悩む女性のほとんどは、妊娠から始まる腹筋機能の低下と胸郭の屈曲拘縮が産後からこれまでずっと残ったままにした結果かもしれません。

つぐみ整骨院伊勢崎店での「産後ケア」

当院ではこれまでにお伝えした産後ケアで腹直筋の機能回復や、胸郭の可動性改善、運動療法(エクササイズ)を患者さまの状態に合わせて行います。

女性の方で体型や身体不調でお悩みの方は一度ご相談下さい。

やらないよりは行った方が良いセルフケア

今回のセルフケアは腹筋群の機能回復に必要な「腹筋群の癒着」をケアする目的で「深呼吸」をご紹介。

「なんだ深呼吸か」と思うかもしれませんが、当院で腹部の癒着を取り除いた患者さまにも実際に取り組んでいただき体をキープしてもらっているケアです。

鼻から大きく息を吸い込み、吸った空気をお腹へ持っていきましょう。

目を閉じて、お腹に空気が満ち溢れてくるのを感じましょう。

執筆者

つぐみ整骨院 院長 篠田健太

保有資格
柔道整復師国家資格(厚生労働省認定)
プロコーチ(マインドセット社認定)
日本足病学協会
Foot Science International社(ニュージーランド認定)

参考文献

Kouhkan, S.、Rahimi, A.、Ghasemi, M.、Naimi, SS、Baghban, A. Akbarzadeh (2015) 「初産婦の姿勢変化」 British Journal of Medicine and Medical Research、7 (9)、pp. 744-753。ISSN 22310614

Wendy L Gilleard, J Mark M Brown, Structure and Function of the Abdominal Muscles in Primigravid Subjects During Pregnancy and the Immediate Postbirth Period, Physical Therapy, Volume 76, Issue 7, 1 July 1996, Pages 750–762, https://doi.org/10.1093/ptj/76.7.750

vonne Coldron, Maria J. Stokes, Di J. Newham, Katy Cook,Postpartum characteristics of rectus abdominis on ultrasound vonne Coldron, Maria J. Stokes, Di J. Newham, Katy Cook,Postpartum characteristics of rectus abdominis on ultrasound imaging,Manual Therapy,

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