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はじめに
「姿勢矯正」の目的は人それぞれで、
・痛みから解放されるために
・見た目を変えるために
・パフォーマンスを向上するために
ちなみに、当院に来る患者さんから聞いた話で「1年間、他の接骨院で姿勢矯正を受けたけど、1ミリも変わらなかった」
実はこういった事例はよくある話。
姿勢矯正を受けても、その場は変化するけど、すぐにまた戻ってしまい、結局姿勢が変わらないという現実問題があるのです。
私がこの問題の記事タイトルを付けるならば「ビシネス姿勢矯正の真実」なんてどうだろうか。
そもそも姿勢とは何なのか?姿勢は人それぞれ違うもの?姿勢矯正のメカニズムは?これらを理解した上で姿勢矯正を行っている?
果たしてどうなのでしょう?
この記事はこれから姿勢矯正を受けたい人、施術者として矯正を行っている人、どちらの人にも知っておくべき知識を共有し「ビジネス姿勢矯正」にハマる人が減ればいいなと思います。
姿勢矯正とは
「姿勢矯正」と聞いて何が連想されるでしょうか?
・ボキボキする?
・マッサージ?
・体操?
・筋トレ?
上記にあげた言葉はいわゆる姿勢を矯正する「方法」を述べたのですが、姿勢を矯正する方法など正直のところなんでも良いのです。
大事なのは、姿勢矯正を受けたならば、その後の姿勢に持続的な変化があるかどうかです。この「持続的な」がキーワードです。
姿勢矯正を受けた一瞬の出来事を切り取り「姿勢が変わった」と喜んでも仕方ありません。それでは本来の目的が達成されず
・痛みは変わらない
・姿勢が良くならない
・パフォーマンスは向上しない
ことが容易に想像できます。
では、姿勢の持続的な変化を起こすために何が必要なのでしょうか?
そして、そもそも姿勢に変化が起きることが体にとって良いことなのか?
この辺りを深堀していきましょう。
よくある姿勢の悩み
姿勢の持続的な変化のメカニズムをお伝えする前に、よくある姿勢の悩みをいくつかあげます。
猫背
背中が丸まってしまう姿勢を猫背とよびます。猫背の中にも「巻き肩タイプ」やお年寄りによくみられる「全体猫背」などのタイプがあります。
反り腰
腰はもともと反っているのですが、この反りが通常よりも過剰に起きてしまい「反り腰」となります。
頭部前方位(ストレートネック)
頭部(お顔)を横からみた状態で、肩の中心ラインより耳が前方に位置している不良姿勢のことをさします。
他にも不良姿勢はあるのですが、姿勢でお悩みの方はだいたいこの3種類のどれか、もしくは2種類以上の不良姿勢が組み合わさっている場合が多いようです。
不良姿勢のよくある原因
不良姿勢を矯正するために必要なことは、不良姿勢になってしまった原因を知ることが姿勢矯正を行うために大事なことです。
不良姿勢の原因は人によって様々ですが、よくある原因をいくつか提示します。
①日常生活において姿勢が固定される
デスクワークで1日中座っているのだとしたら、あなたは猫背まっしぐらでしょう。とはいえ仕事を変える訳にはいきませんよね。ジョブチェンジする代わりに適切なケアが必要です。
②筋力が不足している
筋力が不足していると同じ姿勢を保持することが困難になります。よくある筋力不足による不良姿勢のひとつに座位時の頭部前方位です。これは頚部深屈筋である頚長筋などの筋力低下が原因の一つとして挙げられます。(1)
③軟部組織が癒着を起こしている
(日本整形内科学研究会ホームページより)
最もポピュラーな癒着は五十肩にみられます。関節包と上腕骨頭が癒着しそれによる強力な関節可動域制限です。このような軟部組織の癒着の原因ははっきりと解明されていませんが、治療において改善実績は多数存在します。(2)
④既往歴
例えば足首の捻挫をしてそのままに放置すると、歩き方に異常が出現します。すると姿勢も同様に変化し固定されてしまいます。既往歴が存在する場合はその部位に対して治療が必要かどうかの判断が重要です。
上記がマクロ視点でみたよくみられる不良姿勢の原因です。とはいえミクロ視点でみれば、不良姿勢の原因は十人十色です。正確に原因を把握し姿勢矯正を行うには高度な知識・技術・コーチングスキルを要します。
姿勢を維持する難しさ
「姿勢を矯正すること」と「姿勢を維持すること」は全くの別物です。というのも姿勢は簡単に矯正されるが、その後において姿勢を維持するための必要な要素があるからです。
姿勢を維持するための必要な要素
それは「筋持久力」を必要とします。姿勢によって活動する筋肉が違います。立位や座位、座位でも正中位・猫背・反り腰なのかによっても違います。
その人の姿勢特性によってどの筋肉に対してトレーニングをするか適切な判断と方法が必要です。
実際のところこの一連の維持作業をご自分で行うのには限界があるかもしれません。もちろん自分を客観視できる方ならできないこともないのですが、プロのスポーツ選手でさえプロのコーチを付けてトレーニングを行います。
その理由はやはり、自分だけでは客観性に劣ってしまうことが大きな要因かと思います。
人は無意識な「癖」が出やすいもので、人間は気付かぬうちに元の楽な姿勢に戻ろうとします。それを防ぎ指導を受けるためにプロスポーツ選手はコーチを付けるのです。
姿勢を確実に矯正していくために
ここまでで不良姿勢の原因から、姿勢を維持するための難しさを語りました。姿勢はその人の生活習慣、遺伝、既往歴、身体構造の不良(歪み等)などさまざまな要因が関係します。そして、姿勢を矯正できたとしても「持続的な」姿勢保持に「筋持久力」を必要とすることを述べました。
これらを踏まえると、姿勢を確実に矯正していくために必要なことは既に明らかです。
①身体構造不良を最小限にする
軟部組織の癒着や骨格の過度な偏り(ズレ)など身体の本来あるべき姿から遠ざかってしまっているのであれば、まずはそれらを修正した方が懸命です。
②生活習慣の改善
猫背などの不良姿勢、無意識に行っている体の動かし方、運動不足による筋肉の減少など生活習慣を見直すことは重要です。しかし、これらは全て無意識に行われているため自分自身で気付いて直すことは至難の業。
③既往歴または現在進行形の痛みの改善
過去の怪我や現在も続く腰痛など、身体に痛みが存在すればそれをかばった姿勢や動きになるでしょう。例えば腰痛ならば、まずは腰の痛みを落とす作業から優先的に行うことをお勧めします。
まとめ
「姿勢矯正」と安易に謳っている個人や組織を目にしますが、それと同じくして「そのような所に1年通ったのに全く変わらなかった」と仰るクライアントが当院へしばしば訪れます。
その理由は明らかに「姿勢矯正」を侮っているとしか言いようがありません。姿勢矯正とは右利きの人を左利きに変えていくような行為そのものです。
ですので当然「矯正を受けただけで姿勢がパッと変わりますよ」なんてことはあり得ないのです。その時だけ姿勢は簡単に変わります。
簡単に変わるからこそ「戻りやすい」のです。
「持続的に保持できる良姿勢」を目指すのであれば、
まずは、優れた信頼できて身体を任せられるコーチと出会うことが姿勢矯正の始まりです。
執筆者
つぐみ整骨院 院長 篠田健太
保有資格
柔道整復師国家資格(厚生労働省認定)
プロコーチ(マインドセット社認定)
日本足病学協会
Foot Science International社(ニュージーランド認定)
参考文献
(1)デボラ・ファラ、グウェンドレン・ジュル、トレバー・ラッセル、ビル・ヴィセンジーノ、ポール・ホッジス、「慢性首痛患者における首のエクササイズの座位姿勢への影響」、理学療法、第 87 巻、第 4 号、2007 年 4 月 1 日、408 ~ 417 ページ
(2)Siegel LB, Cohen NJ, Gall EP. Adhesive capsulitis: a sticky issue. Am Fam Physician. 1999 Apr 1;59(7):1843-52. PMID: 10208704.
Harman, K., Hubley-Kozey, C. L., & Butler, H. (2005). Effectiveness of an Exercise Program to Improve Forward Head Posture in Normal Adults: A Randomized, Controlled 10-Week Trial. Journal of Manual & Manipulative Therapy, 13(3), 163–176. https://doi.org/10.1179/106698105790824888
日本整形内科学研究会ホームページURL(https://www.jnos.or.jp/for_medical)
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