治療家向け

腰痛の原因が特定できない治療家がやりがちな落とし穴3選

腰痛患者を前に「原因が特定できず、結局その場しのぎの治療になってしまった…」
あるいは「なんとなく治療をして、なんとなく軽くなる程度」で治療を終えてしまう。

そんな経験をした治療家は多いはずです。過去の私もそうでした。
痛みの場所ばかりに意識が向き、評価が甘くなったり、治療の軸が定まらなかったり…。

本記事では、私が臨床で感じる 「腰痛の原因特定で多くの治療家が陥る落とし穴」 を3つ紹介します。
これを読むことで、あなたの評価・治療の精度が一段階上がるはずです。


落とし穴①:問診だけに頼りすぎる

「どこが痛いですか?」「どんなときに痛みますか?」
これは当然大切な質問です。ですが、問診だけで原因を特定した気になっていないでしょうか?

例えば、患者が「腰の真ん中が痛い」と言っても、その原因が仙腸関節、股関節、胸椎、あるいは下肢のアライメント異常にあることは珍しくありません。

私のアドバイス:
問診では 「どの動作や姿勢で痛むか」「どの動作や姿勢だと楽か」 を必ず最初に聞いてください。これだけで除外できる腰痛があることもあります。

例えば、ぎっくり腰の場合。動くと痛いのは当然ですが「横になって寝ていれば楽」なら、重篤な病気からくる腰痛ではなさそうだと判断でき、病院へ紹介する必要性は下がります。

また「前へかがめるけど体を真っ直ぐにできない」のであれば、単なる筋肉の問題ではなく 腰椎の関節周囲に問題がある可能性 が高まります。


落とし穴②:1つの徒手検査だけで決めつけてしまう

徒手検査はもちろん重要です。しかし、それだけで「原因はこれだ」と決めつけると、評価が浅くなり、治療もブレます。

徒手検査はあくまでヒントの一つ。他の徒手検査や動作評価、荷重バランス、姿勢観察と組み合わせて 全体像の中での原因 を探る必要があります。

私のアドバイス:
徒手検査で陽性所見が出たときこそ、あえて類似の徒手検査や動作評価でその関連を確かめてください。治療精度が格段に上がります。

例えば、SLR検査が陽性で椎間板ヘルニアの疑いがあるのであれば、神経の伝達を評価する「反射の評価」や、神経圧迫により起こる「筋力の低下」を評価する「徒手筋力検査(MMT)」を行うことで評価の精度が高まります。

評価によっては病院へ紹介しなくてはいけない疾患もありますので、ここはきちんと行いたいところですね。


落とし穴③:治療しながら原因を探そうとする

「とりあえずやってみて効いたらそこが原因」
このやり方はその場では効果が出ることもありますが、再現性がなく、患者からの信頼を失う原因になります。

治療前に 「どこが原因かの仮説」 を立て、その上で治療効果を検証する流れが必要です。

この繰り返しをすることであなたの評価スキルが成長しますので、ぜひ行ってください。


私からの大切なアドバイス

ここまで3つの落とし穴を紹介しましたが、これらすべてに共通する大切な視点があります。
それは 「傷病名を正しく理解すること」 です。

腰痛という症状だけでなく、

  • どの組織・構造が痛みを出しているのか?
  • その傷病名は何か?(例:仙腸関節障害、椎間関節障害、神経根症など)

これを明確にしない限り、どんなに評価しても治療内容が定まりません。


私は評価のゴールは常に 「傷病名=原因のラベル付け」 にあると考えています。
この意識を持つことで、腰痛治療の精度は確実に変わります。

柔道整復師は傷病名を軽視する先生方がおられる印象があります。

「痛みが取れればいいじゃん」と思う気持ちも理解できますが、できるだけ多くの傷病名を理解することで治療の精度が格段に向上します。私も常に勉強していますから、一緒に頑張りましょう。


終わりに

腰痛の原因特定は、治療家にとって最も重要で、最も差がつく部分です。
この記事が、あなたの臨床のヒントになれば幸いです。

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執筆者

つぐみ整骨院 院長 篠田健太

柔道整復師として10年以上、整骨院(接骨院)、整体院にて修行し独立。
地域の方や日本代表レベルのスポーツ選手の治療にあたる。
痛み治療や身体動作に関するトレーニングの講演を行なっている。

保有資格
柔道整復師国家資格(厚生労働省認定)
プロコーチ(マインドセット社認定)
日本足病学協会

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