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股関節が痛い。だからストレッチをしている方へ
股関節に痛みや違和感がある。
動き出しの一歩目に、脚の付け根がズキッとする。長く座ったあとに立ち上がると、股関節がつまるような感じがする。
そんなとき、多くの方はこう考えます。
「股関節が硬いからだろう」
そしてストレッチを始めます。開脚、脚の付け根を伸ばす、お尻を伸ばす。動画を見ながら、毎日続けている。
それでも痛みが変わらない。むしろ、伸ばした翌日のほうが痛い気がする。
もしそうなら、前提が違っている可能性があります。
近年、股関節の痛みの原因として、硬さではなく**「ゆるさ」**が注目されるようになっています。

股関節の「微小不安定症」という考え方
**微小不安定症(マイクロインスタビリティ)**という言葉をご存じでしょうか。
これは、股関節の骨頭(脚の付け根の丸い部分)が、本来より少し余分に動いてしまう状態を指します。脱臼のような大きなズレではなく、ごくわずかな、しかし症状を伴う動きすぎのことです(※1)。
比較的新しい概念です
この考え方は、比較的最近になって整理されてきたものです。
2024年に発表されたスコーピングレビューでは、関節症を伴わない股関節の痛みと機能障害の原因として、若く活動的な人において認識されるようになってきた一方で、その病態生理はまだ明らかになっていないと述べられています(※2)。
このレビューでは2,808件の記録から123件が対象となりましたが、微小不安定症には複数の定義が存在し、統一された用語や明確な診断基準はまだ確立されていないことも報告されています(※2)。
つまり、**「まだ研究が進んでいる途中の概念」**です。ここは正直にお伝えしておきます。
どんな人に見られるのか
報告されている背景要因としては、次のようなものが挙げられています。
- 関節を包む膜や靭帯がゆるみやすい傾向があること
- 股関節の受け皿(臼蓋)のかぶりが浅めであること
- 繰り返し関節に負荷がかかること、特に極端な範囲まで動かすこと
ダンス、新体操、バレエ、ヨガ、水泳、武道など、股関節を大きく動かす動作を繰り返してきた方に見られやすいと考えられています。
実際、非手術的な治療を受けた64名を調べた研究では、そのうち63名が女性で、平均年齢は32.2歳でした(※3)。

なぜ、ストレッチで良くならないのか
ここが最も重要な点です。
硬さが原因の場合と、ゆるさが原因の場合とでは、必要な対処が正反対になります。
ゆるい関節を、さらに伸ばすとどうなるか
股関節にゆるみやすい傾向があるとき、身体はどうしているでしょうか。
支えが足りない状態を、周囲の筋肉を固めることで補っています。
つまり、股関節まわりが張っている、硬く感じる。それは原因ではなく、結果かもしれません。身体が安定を作るために、あえて固めている可能性があるということです。
その状態でストレッチを続けると、どうなるか。
身体がつくった支えを、こちらから外しにいくことになります。
一時的には楽になります。しかし支えがなくなれば、関節はさらに不安定になる。すると身体は、また別の場所を固めようとする。
伸ばす → 一時的に楽 → また張る → また伸ばす。
この繰り返しから抜けられない場合、そもそも向かっている方向が違うのかもしれません。
では、どうすればいいのか
答えはシンプルです。
伸ばすのではなく、安定させる。
ゆるさがある関節に必要なのは、周囲の筋肉が適切なタイミングで働き、関節をきちんと支えられるようになることです。
運動療法で改善している人が多くいます
この点について、参考になる報告があります。
微小不安定症と診断され、まず理学療法を勧められた64名を平均45.7ヶ月追跡した研究では、約7割の方が手術に至らず、理学療法とホームエクササイズによって症状が改善し、臨床評価スコアも向上したと報告されています(※3)。この研究では、機能評価の点数が67.4から85.0へ改善しています。
ただし、この研究は症例集積研究(エビデンスレベル4)です。 比較対照がないため、「運動療法が効いた」と断定できる強さの研究ではありません。この点は正確にお伝えしておきます。
また前述のスコーピングレビューでも、微小不安定症に対する保存療法の有効性を検証した研究は不足していると指摘されています(※2)。
■ 注意点 痛みが出る場合は中止してください。無理のない範囲で行いましょう。
必ず、医療機関での確認を
ここまで「ゆるさ」の話をしてきましたが、股関節の痛みには、他にも重要な原因があります。
特に、動き出しの一歩目に痛みが出る、という症状は、変形性股関節症の初期に見られる代表的な症状でもあります。ほかにも、大腿骨頭壊死症、関節唇損傷、骨折など、画像検査でなければ判断できない状態が含まれます。
次のような場合は、必ず整形外科を受診してください。
- 痛みが徐々に強くなっている
- 歩ける距離が短くなってきた
- 夜間、寝ているときにも痛む
- 脚の長さが変わった気がする
- ステロイドの使用歴、多量の飲酒歴がある
- 転倒などのきっかけがある
レントゲンやMRIでしか分からないことがあります。
当院でも、必要と判断した場合は画像検査をお勧めしています。徒手的な施術では、骨の構造そのものを変えることはできないからです。
伊勢崎市で、股関節の痛みにお困りの方へ
医療機関で「骨に大きな異常はない」と言われた。それでも痛みが続いている。
そういった方に対して、当院では身体の使い方という視点から確認を行っています。
- どの関節にゆるさがあり、どこが過剰に働いているのか
- 歩くときに、体重をどこで受け止めているか
- 足裏のどこに、どれだけ荷重がかかっているか
歩行解析機器と足底圧測定を用いて、これらを数値で記録しています。
感覚では分からない部分が、データにすると見えてきます。

こんな方にご相談いただいています
- ストレッチを続けているが、股関節の痛みが変わらない
- マッサージや整体では、その場しか楽にならない
- ダンス、バレエ、ヨガなどで股関節を大きく使ってきた
- 病院で「異常なし」と言われたが、痛みが残っている
ご予約について
午前中(10:00〜13:30)は比較的ご予約が取りやすくなっています。
初回は、痛みの経過と、これまで何に取り組んでこられたかを詳しくお聞きするところから始めます。
まとめ
- 股関節の痛みの原因は、硬さとは限らない
- 近年、**ゆるさ(微小不安定症)**による痛みが注目されている
- ただし、まだ診断基準も確立されていない、研究途上の概念である
- ゆるさが背景にある場合、ストレッチは支えを外す方向に働く可能性がある
- 必要なのは、伸ばすことではなく安定させること
- 動き出しの痛みは変形性股関節症の初期症状でもあるため、まず医療機関での確認を
ストレッチが悪いわけではありません。合っている人には、しっかり効きます。
ただ、続けても変わらない場合は、一度立ち止まって、方向そのものを確認してみてください。
【参考文献】
※1 Khanduja V, Darby N, O’Donnell J, Bonin N, Safran MR. Diagnosing hip microinstability: an international consensus study using the Delphi methodology. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy. 2023;31(1):40-49.
※2 Caliesch R, Beckwée D, Taeymans J, Schwab JM, Renaud T, Brossard Q, Hilfiker R. Hip microinstability and its association with femoroacetabular impingement: A scoping review. Archives of Physiotherapy. 2024;14:29-46.
※3 Ejnisman L, Elisman K, Safran MR. Effectiveness of nonoperative management of hip microinstability. The American Journal of Sports Medicine. 2022;50(4):1013-1019.
【監修】

院長 篠田
「何をやっても変わらない」という方を見てきた中で、原因が静止した姿勢ではなく歩行にあること、そして人によって必要な対応が真逆になることに行き着きました。だから当院は、姿勢と歩行をセットで扱います。
施術者や学生に向けて、身体の仕組みや腰痛治療について講義を行っています。
・柔道整復師 国家資格(厚生労働省認定)
・Myokinematic Restoration(PRI JAPAN)
・日本足病学協会 Foot Science International社(ニュージーランド認定)
・プロコーチ(マインドセット社認定)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の症状に対する診断や治療効果を保証するものではありません。効果の感じ方には個人差があります。股関節の痛みには医療機関での検査が必要な原因が含まれます。症状が続く場合は必ず医療機関にご相談ください。

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