姿勢

筋肉をゆるめても痛みが治らない理由とは?側弯症や体のクセを根本から変える「感覚のアップデート」の必要性

「マッサージで筋肉をほぐしても、すぐに痛みが戻ってしまう」

「側弯症(そくわんしょう)と言われ、一生この痛みと付き合うしかないと諦めている」

もしあなたがそう感じているなら、足りないのは「ゆるめること」ではなく、「脳の感覚をアップデートすること」かもしれません。

本記事では、なぜ筋肉をゆるめるだけでは不十分なのか、そして巷で言われる「矯正で使い方が勝手に変わる」という説の真実について解説します。


1. 筋肉が硬いのは「原因」ではなく「結果」である

多くの人は「筋肉が硬いから痛い」と考え、一生懸命にほぐそうとします。しかし、実は筋肉の硬さは、脳があなたの体を守ろうとして出した「結果」に過ぎません。

特に以下のような方は、筋肉だけをアプローチしても解決が難しいのが現実です。

  • 側弯症の方: 背骨の構造に合わせた「独自のバランス」を脳が記憶している。
  • 体の使い方のクセが強い方: 特定の筋肉ばかり使う歩き方や姿勢が「標準」になっている。

脳が「この姿勢が正しい(あるいは安全だ)」と思い込んでいる限り、いくら外側から筋肉をゆるめても、脳はすぐに元の硬い状態へと引き戻してしまいます。


2. カイロの「矯正で使い方が勝手に変わる」は本当か?

カイロプラクティックや整体の世界では、「骨格を矯正(アジャスト)すれば、神経伝達が正常化し、脳が勝手に体の使い方を変えてくれる」という考え方があります。

これに対し、多くの臨床現場を見てきた私の見解は、「半分正解で、半分は不十分」です。

なぜ「半分」なのか?

矯正によって関節の可動域が広がり、脳への信号がクリアになるのは事実です。いわば、「古くなったパソコンのOSをクリーンインストールした状態」になります。

しかし、OSを入れ替えても、使う人間が「以前と同じ間違った操作(古い体の使い方のクセ)」を続ければ、結局はまたシステムエラー(痛み)が起こります。

アプローチ役割限界
筋肉をゆるめる一時的な除痛・リラックス脳の命令(クセ)は変わらない
骨格の矯正神経の通り道の掃除(リセット)自発的な「正しい動き」までは保証しない
感覚のアップデート脳の地図の書き換え(本質)意識的な取り組みと反復が必要

3. 必要なのは「脳のボディマップ」の書き換え

痛みを根本から解決するために必要なのは、脳内にある自分の体の地図(ボディマップ)を更新すること、つまり「感覚のアップデート」です。

感覚のアップデートとは?

例えば側弯症の方の場合、体は傾いていても、脳はそれを「真っ直ぐ」だと認識しています。このズレを修正するために、以下のプロセスが必要になります。

  1. 「今のズレ」を正しく認識する: 「自分では真っ直ぐのつもりでも、実は左に寄っている」という事実を、鏡や感覚フィードバックで自覚する。
  2. 「新しい正しい感覚」を体験する: 施術で整った状態で、「あ、この位置が本来の楽な位置なんだ」という感覚を脳に覚え込ませる。
  3. 日常で再現する: 良い状態を維持するための「体の使い方」を、脳の無意識層まで落とし込む。

4. 「勝手に変わる」のを待たず、自分の体と対話する

「先生に治してもらう(勝手に変えてもらう)」という受動的な姿勢では、長年のクセや構造的な課題を克服するのは困難です。

当院では、施術によって体が動きやすくなった「黄金の時間」を使い、患者さん自身が「正しい体の感覚」を掴むためのガイドを重視しています。

  • 「あ、今はいつもより足裏全体で地面を捉えているな」
  • 「背中を丸めない方が、呼吸が深く入るな」

こうした小さな感覚の発見こそが、脳をアップデートする最強の薬になります。


まとめ:痛みから卒業するために

筋肉をゆるめる段階を卒業し、自分の体を正しく乗りこなす「感覚」を手に入れれば、痛みに振り回される毎日は終わります。

もしあなたが「どこに行っても戻ってしまう」と悩んでいるなら、それはあなたの根性が足りないわけでも、筋肉が人より硬いわけでもありません。単に脳のアップデート方法を知らなかっただけなのです。


次のステップ:あなたの「脳のクセ」を見つけてみませんか?

まずは、自分が無意識にどんな姿勢をとっているか、鏡の前でチェックすることから始めましょう。

もし、具体的な「感覚のトレーニング方法」や、自分の体の歪みのタイプを知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

つぐみ整骨院伊勢崎店では「姿勢改善」専門の契約コースを設置しています。

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参考文献

本記事の知見について:当院では、上記のような最新の神経科学および身体運動学の知見に基づき、単なるマッサージに留まらない「脳と感覚のアプローチ」を提供しています。

  1. 『脳はいかに治るか ―神経可塑性研究の最前線』ノーマン・ドイジ(著)/竹内和世(訳), 紀伊國屋書店.選定理由: 脳が経験や刺激によって構造を変える「神経可塑性」のバイブル的著作です。「感覚をアップデートすれば体は変わる」という論理的根拠を補強します。
  2. 『The Reality Check: A Quest to Understand Chiropractic from the Inside Out』Heidi Haavik(著), Haavik Research.選定理由: 著者はカイロプラクターであり神経科学者。「カイロの矯正が脳(前頭前野や体性感覚野)の機能にどう影響するか」を科学的に証明した研究に基づいています。
  3. 『痛みは脳でつくられる ―最新の痛み学:メカニズムと治療戦略』ロリマー・モーズリー、デビッド・バトラー(著), 講談社.選定理由: 現代の痛み学の世界的権威による著書。「痛みは組織の損傷ではなく脳の出力である」という視点は、本記事の核となる考え方を支えます。
  4. 『The Body Has a Mind of Its Own(邦題:脳の中の身体地図)』Sandra Blakeslee, Matthew Blakeslee(著), Random House.選定理由: 脳内にある「ボディマップ(自己の身体表象)」がいかに歪み、いかに修正可能かを一般向けに詳しく解説した名著です。
  5. 『Schroth’s Textbook of Scoliosis and Other Deformities』Hans-Rudolf Weiss(著), Melsungen: J.B. Fischer.選定理由: 側弯症のリハビリテーションにおける世界的標準「シュロス法」の文献です。側弯症の改善には単なる矯正だけでなく「感覚運動の再学習」が不可欠であることを説いています。

執筆者

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つぐみ整骨院 院長 篠田健太

柔道整復師として10年以上、整骨院(接骨院)、整体院にて修行し独立。
地域の方のみならず日本代表やプロスポーツ選手の治療にあたる。
痛み治療やトレーニングに関して講演を行なっている。

保有資格
柔道整復師国家資格(厚生労働省認定)
プロコーチ(マインドセット社認定)
日本足病学協会
Foot Science International社(ニュージーランド認定)

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